カフカ『巣穴』57
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第57回です。
頭木弘樹
2026.09.25
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●翻訳のつづきです
もし自分の身の安全を守るという目的のためだけに巣穴をつくったのだとすれば、それは割に合わない仕事だった。当てが外れたというほどではないものの、とほうもない労力に比べて、そこまでの安全は得られていない。少なくともわたしの実感としてはそうだ。これを認めるのは非常につらいことだが、認めざるをえない。なにしろ、目の前の出入口が、わたしを入れることをかたくなにこばんでいるのだから。巣穴をつくったのも、巣穴の持ち主もわたしだというのに。