カフカ『巣穴』49
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第49回です。
頭木弘樹
2026.08.18
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また数日ぶりになってしまい申し訳ありません!
●翻訳のつづきです
しかし、そんなふうに疑ってみる必要さえない。こういう可能性を考えてみるだけで充分だ。信頼できる相手がいたとしても、わたしが巣穴に降りていくあいだに、あるいはそのあとに、その相手にどんなことが起きるかわからない。不測の事態というのは人生につきもので、いくらでもふりかかってくるし、そのせいでやるべきことがやれなくなることもある。どんなささいな不測の事態でも、相手に何か起きれば、それがわたしにどのような結果をもたらすか、わかったものではない。そう、あらゆる可能性を考えてみれば、わたしがひとりぼっちで、信頼できる相手が誰もいないのは、決して嘆くようなことではないのだ。そのせいでわたしが何かを失うようなことはないし、かえってひどいめにあわずにすむだろう。