カフカ『巣穴』20

フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第20回です。
頭木弘樹 2026.06.21
サポートメンバー限定

●翻訳のつづきです

 もちろん、それでも時折、いや、もしかしたらいつだって、この欠陥がわたしを不安にさせないわけではない。ふだんの散歩のとき、このあたりを避けるとしたら、その主な理由は、見るのが不快だからだ。それでなくてもここの欠陥が気になってしかたないのに、あらためて目の当たりにしたくない。上の出入口のところにどうしようもない欠陥があるとしても、見ないですむあいだは、そうしていたいのだ。

 出入口のほうへ向かうだけで、まだ通路や広場でへだてられていても、もうすでに何か大きな危険に足を踏み込んでいるような気になる。まるで身体をおおう毛が薄くなっていき、ついにむき出しの肉になった瞬間、敵の咆哮【ほうこう】に迎えられるような、そんな気がするときもある。

この記事はサポートメンバー限定です

続きは、653文字あります。

下記からメールアドレスを入力し、サポートメンバー登録することで読むことができます

登録する

すでに登録された方はこちら

サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』49
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』48
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』47
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』46
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』45
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』44
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』43
サポートメンバー限定
カフカ『巣穴』42