カフカ『巣穴』23
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第23回です。
頭木弘樹
2026.06.24
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●翻訳のつづきです
やがて苔の覆いの下までくる。ずいぶん久しぶりのときもあり——そのあいだは家から一歩も出ていないのだ——そういうときは、苔の覆いが周囲の森の地面と一体化してしまっている。だが、頭でひと突きすれば充分で、そこはもう外の世界だ。ところが、そのひと突きをする勇気がなかなか出ない。今日のところはやめておいて、引き返してしまいたくなる。ただ、引き返すには、また迷路を通り抜けなければならない。そうでなければ、きっと引き返していただろう。