カフカ『巣穴』34
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第34回です。
頭木弘樹
2026.07.08
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●翻訳のつづきです
そう、眠っているあいだも自分自身を見守っていられると、わたしは信じこんでいたが、そうではなかった。それどころか、破壊者が目覚めているあいだ、わたしはずっと眠っていたのだ。やつはおそらく、巣穴の出入口の近くを何気なく通りすぎる者たちのなかにいる。出入口の苔の覆いがまだ無傷で、攻撃されるのを待っている状態であることを、わたしと同じようにたしかめるだけで、いつもそのまま、ただ通り過ぎていく。巣穴の主人が中にいないのを知っているからだ。あるいは、主人が近くの茂みの中に無邪気に潜んでいることまで知っているのかもしれない。