カフカ『巣穴』33
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第33回です。
頭木弘樹
2026.07.07
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●翻訳のつづきです
しかし、子どもじみた夢からは、覚めるのも早い。ここからいったいどんな安全が確認できるというのか? 巣穴の中にいるときの危険が、外にいてわかるとでもいうのか? わたしが巣穴の中にいないとき、敵はわたしの臭いをちゃんと嗅ぎつけられるだろうか? 巣穴にいくらか臭いが残っているのはたしかだが、完全ではない。臭いの元が巣穴の中にいてこそ、巣穴が本来どれほど危険なのか、ちゃんとわかるというものでは?
だから、ここでわたしがやっているようなことは、中途半端な確認でしかなく、自分を安心させることにしか役に立たない。しかも、その偽りの安心感によって、かえって極度の危険にさらされてしまうのだ。