カフカ『巣穴』31
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第31回です。
頭木弘樹
2026.07.04
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●翻訳のつづきです
ここから見張っているあいだ、出入口のあたりを探る者はまったくいなかった。わたしにとってはもちろん、相手にとっても幸いなことだった。もし目にしていたら、巣穴が心配でたまらず、我を忘れて、きっと相手の喉首【のどくび】に飛びかかっていただろう。
もちろん、恐くてとても近くにはいられないような連中もやってきた。やってきそうだと気がつくと、相手がまだ遠くにいるうちから、逃げ出さずにはいられなかった。だから、巣穴のあたりでやつらがどうしていたか、実際のところはわからない。ただ、少ししてわたしが戻ってきたとき、もう誰もいなかったし、出入口も無事だった。安心してもかまわないだろう。