カフカ『巣穴』21
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第21回です。
頭木弘樹
2026.06.22
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●翻訳のつづきです
もちろん、出口というのは、そもそもそういう病的な感情を呼び起こすものだ。そこから出れば、もう家に守ってもらえなくなるのだから。しかし、やはり出入口の迷路が、わたしをひどく苦しめる。ときおり、わたしは夢の中で、誰にも気づかれず、ものすごい力で素早く、一夜のうちに出入口を完全につくり直し、これでもう難攻不落になったと感じる。どんな眠りよりも、そういう夢を見るときの眠りが最も甘美だ。目が覚めたときにも、喜びと救済の涙がまだ髭【ひげ】で光っている。