カフカ『巣穴』28

フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第28回です。
頭木弘樹 2026.07.01
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●翻訳のつづきです

 愚かな行為だと言われるかもしれないが、わたしにとっては、言い表わせないほどの喜びであり、安心できるのだ。眠っているあいだも、まるで自分の家の前ではなく自分自身の前に立っていて、深く眠りながら同時に自分を注意深く見張っていられるような、そんな幸せを感じるのだ。いわばわたしは、夜の亡霊たちを、眠っているときの無防備で、何でも信じこんでしまう状態で見るだけでなく、同時に、目覚めているときの万全の状態で、落ち着いて判断し対処できるという、特権を与えられているのだ。

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