カフカ『巣穴』15
フランツ・カフカの短編小説『巣穴』を翻訳していくtheLetterの第15回です。
頭木弘樹
2026.06.10
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●翻訳のつづきです
そういうあとにはいつも、特別に平穏な時期が訪れる。眠る場所を、巣穴の端のほうから中心に向かって、だんだんと移していく。そうすると、においもだんだん濃くなっていく。ついに我慢ができなくなり、ある夜、中央広場に突進し、たくわえてあった食料をむさぼり食い、気が遠くなるまで、最上の大好物で自分を満たす。
幸福な、しかし危険な時期でもある。そこをうまく狙うやつがいたら、自分の身を危険にさらすことなく、わたしを破滅させることができるだろう。ここでもまた、第二、第三の城郭広場がないことが不利にはたらく。わたしを誘惑するのは、一箇所だけに積み上げられた全食料なのだから。